ちょっと前にアメリカの貯蓄率がジャンプしている、という報道がありました。
実際にこのデータを見てやると 家計貯蓄率のイメージといえば、「アメリカ人=貯蓄なし、稼いだ分だけ消費するキリギリス」、「日本人=貯蓄好きのアリ」というイメージが刷り込まれていますが、それってほんと?と疑問に思ったので調べてみたら非常に面白いレポートがありましたので、ご紹介します。 ”米国家計貯蓄率の行方” 2003年にみずほ総研の方が書かれたレポートですが、今でも十分に同じ状況(!)で大変参考になるので皆様ご一読を。 そもそも貯蓄率は、収入から税金などを引いた可処分所得から、消費を差し引いたものが貯蓄率として定義されていますが、上記レポートでは、 ・アメリカ人の家計で貯蓄率がマイナスになったりするのはテクニカルに問題があるため。投資のキャピタルゲインを収入に計上しない上にキャピタルゲイン課税は消費に含まれてしまうため、株式投資などでキャピタルゲインが多いとマイナス寄与してしまう、という問題点や、公務員の退職積立金の扱いの問題、耐久消費財の計上の仕方の問題など、テクニカルな問題について一つ一つ検証した上で、それでもアメリカ人の貯蓄率が80年代から実際に低下している点を指摘してます。 個人的には「日本人がアメリカ人とかにくらべて貯蓄率が高く出るのは民間保有金融資産構成が違う(日本:預金中心、アメリカ:株や投信中心)のと、人口構成が違う(老齢人口が増えると、預金取り崩しが増える)からじゃないかとおもっていましたが、ある程度そうした点が裏付けられた感。 その上で、実際に80年代から低下している貯蓄率の原因として、資産効果(株式などの上昇に伴うキャピタルゲインで、実質可処分所得が増加した)と、失業率の低下に伴う予備的貯蓄の低下が指摘されています。 レポートには昨年問題になったサブプライムのプレデタリーレンディング(知識の無い人への略奪的貸し出し)についての記述があったり、クレジットカードの延滞率が上がったりと、マグニチュードの違いがあれ、今と同じようなことが起こっていたことがわかります。 こうしたことを踏まえた上で「不動産の資産効果は株の2倍」とか、「貯蓄率の低下を産み出した原因の一つに低失業率がある」、という指摘は重いです。2000年の株下落は住宅投資へのシフト(大枠でみると家計は2001年前後に金融資産を売却し、不動産にシフトした)を促し、さらに金融機関の貸し出しの拡大がそれを後押しし、結果景気後退を防いだ面が大きいと指摘されています。そうすると今回のリセッション(不動産は大幅下落、貸し出しは低下、株も下落、失業率は大幅アップ)と、アメリカ経済の7割を占める個人消費の低迷は長引き、世界の景気回復の足を引っ張るのではないだろうか、今の景気回復論は行き過ぎではないか、とも思えます。 特に上のような状況なので逆資産効果と失業率上昇、さらに401kの老後資金の毀損で消費が大幅に冷え込むと思われ。 【追記】実は日本でも1990年代に家計資金は不動産から定期預貯金に大枠シフトした、という事実があり、不動産のリスクはほとんど銀行を中心とした企業部門が受け止めた、という指摘があります。今回のアメリカの動きも同じように民間がここから数年で、上がりすぎた不動産から他の商品にうまくシフトしていくのでは?とも考えられます。その受け皿がどこになるのか。 ただ、株式市場は企業業績に連動しますから、売り上げが落ちても業績が上向けば上がるんですけどね。とはいえ、その業績上昇の原資はリストラだったりするわけですから、全体で見ると「合成の誤謬」になる可能性が大きいんですけど。 しかし、「アメリカ人は貯蓄しないで散財してばっかりいるから」という思い込みが払拭できただけでも調べてよかったです。まあ「そんなあほな」とは思いながら(アメリカ人ってどっからそんな金持ってきてんだ?消費者金融がそんなに発達してんのか?とか。まあ半分当たってますけど)、ステレオタイプなアメリカ人いめーじで「やつらならありえる」とか思っていましたから、、、。
by ttori
| 2009-07-23 20:11
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