ついにクライスラー破綻。これでGMの破綻の確率が上がったとの見方をされることが多いですので、予行演習的に詳細についていろいろなところのコメントを拾ってみました。
いくつかのコメントで小浜君が「みんなががんばっているときに、再生を阻害したヘッジファンドなどスペキュレーターが悪い!」とコメントしてましたが、彼らが反対した理由が「エコノミーとして、受け入れられない」という理由だったみたいです。(ただ、株主であったサーベラスは”利益が出ても国に納付する”と全面降伏状態であったみたいですが。)これについて担保の関係で破綻してくれたほうが儲かる、という認識があった、とのこと。 今回問題になったクライスラーのバランスシートの内訳は、ざっくり返済優先順位の高い有担保債権(ローン・債券)、無担保債権、優先株(アメリカ政府が持っているのはこのあたり)、株式(PEファンドのサーベラスと独ダイムラー)となっています。今回政府の提案は、有担保ローン(セキュアード・クレジット)69億ドルに対して、20億ドルのキャッシュ(その後22.5億ドルに引き上げ)と10%の株(ただし政府と分け合う)、一方で無担保の大きな部分を占める、労働組合の年金基金債務等向けジュニア債権106億ドルはクライスラーの株55%と約46億ドル債券となっています。 今回の政府のオファーはシニア有担保債務(返済優先債務)の価格が極端に低い上、返済順位の低いジュニア債権(従業員向け債務の支払い額等)への支払い割合がシニアな有担保債務より多い。 多分、債権者(JPモルガン、ゴールドマンやヘッジファンド)のうち、ファンド(オッペンハイマー、ペレラ・ワインバーグ、ステアウエイ・キャピタル等)のポジションを考えると、有担保ローンのロングに対して、CDSでヘッジをかけていたと考えられます。そうすると、(多分使っていたノーマルなCDSは)無担保債務の価格を参照することになるCDS清算価格にたいして、シニアなはずの有担保ローン価格が低くなってしまうと損失を蒙ります。(そして最後までがんばったのがペレラ・ワインバーグ:元モルガンスタンレー副会長、ワッサースタイン・ペレラ、”ビック・ディール”等で超有名M&Aバンカーのペレラ氏の会社。ちなみに今政府の連邦預金保険公社FDICの銀行破綻処理のアドバイザーをやってます:だそうで。)もちろん、ファンド側も(シニア債権精算価格>ジュニア債権生産価格)そのあたりを勘案してポジションを組んでいるはずでしょうし。 【追記】この政府オファーに反対した”ノン・TRAP債権団”は20社(エール大学基金やオークツリー、ビル・アンド・メリンダ財団等々)に上るそうで、、。 あほな株屋なわたしですらわかるこんなことを弁護士出身の小浜君やバンカー達がわからない訳はないとすると、結局彼らは自動車産業を延命させるよりも政治的パフォーマンスを優先させた、と指摘されたとしてもおかしくないと思います。政府としては、大口の債権者の大手銀行には資金を入れいているのでグリップできる、との見方だったのかもしれませんが。 (アメリカのメディアでもその辺の突っ込みがありそうですけど。一方で(有権者でもない)日本メディアがすっぽり小浜君に乗せられて”ウオール街の強欲が悪い”と報道するのはいかがなものか。)どうもオバマ大統領、本気でGM、クライスラーを延命させる気が無いっぽい。 この流れをみると、さらに大きなGMも同じ道をたどるのはほぼ間違いなく。 部品メーカーもアメリカ政府に債務保証をしてもらっているで影響は少ない(だからこんな無理なオファーを提案しているんでしょうけど)上、北米の自動車販売が底打ちの兆しを見せ始めてます(そもそも年率1000万台以下しかアメリカで自動車が売れない(4割以上減)=アメリカ人今までより倍の期間同じ自動車に乗り続ける、ってどうみても異常)。ただ、GMはクライスラーに比べて桁違いに権利関係者が多く、関連会社のGMACという巨大な爆弾があり。 今回の件で露呈したのは、政府というのは(たとえ法の力が強いアメリカですら)自分の都合で”ルール”を書き換えられる、という思い込みがある、ということ。さらに政府が経営に首を突っ込むとろくなことにならない、という事実(原則を曲げて銀行に損させて、労組を優遇するとか)。 そして、普通の人は経済法務原則を押し曲げて政府のオファーを受けられない、という事実。 その上、どうもオバマ大統領、単純なポピュリストとも思えず。そうなると今ストレステストをしている銀行に対してゾンビ銀行を作るようなことをしないのでは?(ストレステストを極端に難しくして銀行に分割・再編を迫る)とも思えますが、それは私の妄想ですか、そうですか。 (ちなみに、ストレステストの条件をみると極端に厳しい条件を付しているとも思えないんですけど。それでも10%以上Tier1資本のあるシティなどが不合格になる、とかいう報道を見ると、かなり?な感じ。つまり今出てきている表面上のストレステスト条件と、いろいろな条件が極端な数値になっている(だから大手銀が反発している)とも考えられます。例:景気回復しローン金利低下ているのにローン延滞率が極端に上がるとか、CDOのコリレーションをいじくってマークを極端に低くするとか) 【追記】これに関して資本不足報道があったウエルズファーゴ等の大株主、バフェット氏がストレステストを批判しています。 マーケットはクライスラー、GMの破綻をほとんど織り込んでいるうえ、じゃぶじゃぶセオリーと官製相場(バランスシートの会計処理のカラクリ等)でしっかりしてますが。 今月のアナリストジャーナルで出ていた、バーナンキの「Fedはフリードマン・シュワルツのおかげで前の恐慌と同じことにはならない」とのコメントを信じるしかないんでしょうか。 【追記】東京株マーケット、、、やっぱりさがりませんねえ。日経9000円はおもいんですけど、なかなか下にも行かない。ショート筋のじりじり感はいかんともしがたく。日経が10月頭から急落してちょうど半年ちょっと。制度信用でショートした方々の期日が迫ってきております。 ファクターはB/Pが極端に効く相場が続いてきましたが、決算数字がリフレッシュされ、一服。極端にキャッシュが回らない懸念が後退し、E/Pが信用ならない(その上アナリスト予想もあてにならない:アナリスト関連指標がほとんどワークしない)状況からすこしずつ変化が現れ始めたような。
by ttori
| 2009-05-02 10:06
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