まぐれ

f0005681_17235325.jpgまぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳)

いくつかのところで取り上げられていた本。
オプショントレーダーとして長年マーケットで生き残ってきた筆者が、マーケットで使われている統計についての誤解や考え方についてまとめてあります。
基本的に統計をきちんと理解している人が読めば、「ふーん」とおもう事、常識的な話がほとんどですが、人が陥りやすい様々な間違いを例示していて面白い本です。何かを判断するときには期待値と確率分布を理解し、その確率分布がきちんと機能するのか、判断する必要がありますが、そうしたことについて陥りやすい間違いにつてい多くの例が示されています。
例えば、確率分布を計算するときにその元となるサンプルを集めますが、そのサンプルが本当に有意に”ランダム”であるかどうか。運用業界にかぎらず、多くの場合サバイバーバイアス(統計が残っているのは競争の中で生き残っている者のみだったり)がかかっていたり、標本抽出にかたよりがあったりします。また、それ以外にも統計にはいろいろなバイアスがかかっていることが示されています。(例:アメリカの高級住宅街で50万ドルしか収入がない人はその中で”不幸で貧乏だ”と思って暮らしているが、それだけ収入があれば多くのアメリカ人のなかで上位数%の豊かさに入る等。)

また、多くの事象が偶然で説明できるのに、それを”実力”だと勘違いする人がどれだけ多いかについてもかかれています。昔のエントリーで、一般に運用業界で言われるアルファは”もしかしたらコイン投げの結果にすぎないのかもしれない”というコメントを書きましたが、この本でも同じようなことが示されています。

私達は数字を示されると、どうも無批判にその数字を受け入れてしまったり、その計算の前提条件を考えないときがあります。
時々ある病気について「一万人に一人」の確率でおこる、とかいったり、最近では妊娠中にそのおなかの子供が検査で*%の確率でダウン症などの症状がわかる、といったり。
病気は一万人に一人だろうが、その一人はいるわけで、その一人にとってそんな確率はまったく意味をなさないわけで。
また、新聞などで大々的に発表が行われて”○○億円の経済効果が見込まれ、、、”と書かれたりしますが、その数字は様々な前提があって初めて出てくる数字で、その前提が崩れるとまったく意味がない。
まあ最近ではデータマイニング(データを掘り起こす)をあちこちに垂れ流している某アナリストもいたりしますけど。

私自身も筆者と似たような、年に一回大きな山を当てるような仕事のやり方をやっているし、筆者と同じく大学でモンテカルロシュミレーションで遊んでいましたので(私の場合は物理学で原子と結晶の軌道計算でしたが、モンテカルロは統計を直感的に理解できる面白いツールです)、なかなか興味深く読みました。また、これだけきちんと統計や、実際の事象がわかっている人達(彼や、彼の友人)でも、実際にトレーディングの現場にいれば心が揺らぐことがある(自分よりも何もわかっていない隣の若者が、波にのって大もうけして、自分よりお金を稼ぎ、みじめな気分にさせられる)事が書かれていたりして、なかなか面白い本です。

最近マーケットでは稀な事象が多発していますので(笑)、今のタイミングで読むのはぴったりの本ではないでしょうか。

【追記】ついでに書くと、最近の金融商品などでペアトレードなど”コリレーション(相関性)”について問題が出ていることがあります。LTCMのときにも問題になりましたが、ファンダメンタル関係なしに一緒に上昇するとコリレーションは(計算上は)跳ね飛びます。リスク管理の方々には釈迦に説法だとおもいますけど。例えば株式のペアトレードが陥りやすいのは計算するとまったく関係ない銘柄でも相関性が見えたりする場合があるのですが、株って”ベータ”が存在する以上、全ての銘柄にある程度の相関性があるんですよね。。
[PR]
by ttori | 2008-03-20 17:20 | 本 / CD / TV
<< 春ですねえ。 なぜだか >>



小さな窓から見上げると曇り空でも、外に出ると意外と晴れてるもんだ。
by ttori

カテゴリ

全体
プロフィール
本 / CD / TV
プライベート
Market(マーケット事件簿)
News
CM一考

以前の記事

お気に入りブログ

メモ帳

検索

人気ジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧