宿澤広朗 運を支配した男
加藤 仁 (著) 元天才ラガーマンとして日本代表を率い、初めてスコットランドに勝ち、さらに為替ディーラー・債券トレーダーとして巨額の利益を銀行にもたらし、同期トップで三井住友銀行専務にまでなりながら55歳でこの世を去った宿澤広朗さんの人生について書かれたものです。 普通こうした本は大企業のトップやベンチャー社長が多いですが、普通のサラリーマンがこうして一冊の本になるのは”まれ”ではないでしょうか。 宿澤さんは、無名の進学校でラグビー部を率い、早稲田ラグビー部では全日本2連覇、そして銀行員として働きながらラグビー日本代表を率い、ラグビー旧宗主国に始めて勝つ、という快挙を成し遂げます。 もちろん、めぐり合わせのよさは住友銀行に入行する際に、のちに頭取・会長として住友銀行の”天皇”と呼ばれた磯田一郎氏に目をかけられ、出世コースでとんとん拍子で出世の階段を上っていくことにも現れていると思います。 読んでいると本人もそのめぐり合わせのよさを自覚していた節がありますが、なによりそれを最大限に生かす努力を怠らない、どんな逆境でも常に勝ちにこだわる強さ、そしてそのための訓練を怠らない人だった、というのが伺えます。 そして、改革を進めようとしてラグビー協会とのいさかいを起こし、銀行内でのやっかみをはねのけ、為替ディーラーとしてロンドンで頭角を現し、支店長としても実績を残し、巨大銀行の役員として不良債権処理の最前線で激務をこなし、55歳で山登りをしているときに心筋梗塞で倒れ、この世を去った宿澤氏。 若くして帰らぬ人となってしまった宿澤氏が、この銀行を率いることになったらどのような金融機関になったのだろうか、そしてラグビー協会を率いたとき、日本のラグビーはどこまでいけたのか、と思わずにはいられません。 なにより、多くの人間を惑わし、その後の塗炭の苦しみを味あわせたバブルの爪あとが、それがどれほどの規模で、その後どれほどの多くの人間を苦しめたのか。国の舵取りの難しさ、そしてその失敗の影響の大きさは慄然とします。 彼の言葉、努力は運を支配するは胸に響きます。ただ運だけに頼らず、運が向いてきたときに最大限それを生かすために努力を怠らないことが大切だと思い知らされます。 読んでいて涙が出そうになりながら、日々がんばらなければ、と思わせる本だと思います。 その2 前に書いた 貫徹の志 トーマス・ワトソン・シニア―IBMを発明した男 ケビン・メイニー (著), 有賀 裕子 (翻訳) をあっさり読み終えてしまったので、次なる 先駆の才 トーマス・ワトソン・ジュニア―IBMを再設計した男 トーマス・ワトソン・ジュニア (著), 高見 浩 (翻訳) に挑戦(<?)しています。 個人的には産業史の勉強は”人”を中心にすえた話のほうが面白くて頭に残ります、、。<あほ)
by ttori
| 2007-08-11 20:53
| 本 / CD / TV
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