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もうちょっと訳をうまくしてくれれば、、、

もうちょっと訳をうまくしてくれれば、、、_f0005681_11564630.jpg天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話
~ウィリアム パウンドストーン (著), William Poundstone (原著), 松浦 俊輔 (翻訳)

競馬や賭け事ののみ屋の話から、現代のヘッジファンドまで、確率と数学の発展の歴史を描いたもの。数学や情報理論という観点からその発展の軌跡と論点整理ができて、面白い本です。ただ、アマゾンなどの書評にも書かれていましたが、訳文が十分こなれていなくて、しかも説明を端折ったと思われる部分も多分にあり(ケリー基準についてや情報理論についての説明が尻切れになってたりする)、本としてはやや読みづらくなっています。





面白かった点を何点か。
クロード・シャノン(情報理論の太祖)は、通信の本質として、それまで考えられていた「通信にとって必要な情報とは、情報の意味だ」という考えから離れ、次のように考えた。「通信の必要な情報が存在するのは、送り手から受け手に、受け手がまだ知らず、予測できないことを言っているときのみだ」とした。つまり、通信量とは、メッセージがどれだけ予測できないか、ということに比例する。
この部分は、もともと私は大学で物理をやっていたこともあり、すんなり理解できましたが、ただ、残念なことに、本ではこのあたりの文章もだいぶ端折ってあるんですが、、、。

「シャノンの悪魔」についての議論も面白く、これはたとえば、市場が十分効率的であれば平均から上方に行けば売り、下方に行けば買うというオペレーションを行うと大きなリターンが得られる(つまり市場が効率的であれば常に平均に回帰するため:定率再分配ポートフォリオ理論)。これは物理学の問題でマックスウエルの悪魔といわれる問題で、熱エネルギーとエントロピーと情報量の関係について整理するのにいいと思います。
ただ、個人的には実際のマーケットで考えると、少し物理の理論とは根本が違うのではないか、と感じます。このあたり、もっと掘り下げると面白とおもいますが。

ケリー基準(簡単に”端折る”と(笑)、算術平均(普通のアベレージ)値よりも幾何平均(すべての要素nを掛算して、n乗根をとる:複利計算のこと)を重視する事)に対する議論の論点を整理できたのも大きな点だと思います。ケリー基準のリスク哲学は、ファットテールの本質、「どんなにありそうにない出来事でも、時がたつにつれ、いずれ必ず起きる」。したがって、すべてを失う可能性がある場合は、いずれすべてを失う。というのも納得できます(たとえば要素に0があれば、算術平均は0にならないが、幾何平均は0になる)。

しかし何度も書きますが、説明が不十分だったりいろいろ端折った点が残念な本ではあります。ただ、内容的にはまとまっていておもしろいと思いました。
by ttori | 2007-01-06 11:48 | 本 / CD / TV
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小さな窓から見上げると曇り空でも、外に出ると意外と晴れてるもんだ。
by ttori