アマランス、その後(No.2) マーケット事件簿1 Part3

しばらく前に話題になったあと、急速に忘れ去られている大型ヘッジファンド・アマランスの破綻ですが、破綻の原因となった天然ガストレーディングについてや、そのトレーディングを行っていたハンター氏について、その後Bloombergに原因について詳細ストーリーが出ていました。



もともとアマランスはマオウニス氏が転換社債(CB)アービトラージから立ち上げたファンドで、その後、様々な戦略投資を行うグローバルマクロ・ファンドに転換していったという背景があります。ところが、ここ数年、CBアーブも様々なヘッジファンドが流入し、利益が出ない状態に陥っていました。これはヘッジファンド指数を見ていても顕著で、CBアーブの運用成績は、他の戦略と比べて運用戦略が低迷していた時期がありました。このCBアービトラージ戦略はもともと、投資銀行のプロップデスクやCBデスクをはじめ、様々なヘッジファンドが昔から行っていたマーケットなのですが、数年前までかなりの好成績を残していました。このため、マーケットに資金が流入・アーブ機会が低下し運用成績が低迷したという事情がありました。

ちなみに運用成績が低迷したファンドが、リターンを得るためにそれまで経験のある戦略から乖離し、別の戦略に移行していくことをスタイルドリフトといいますが、これは自分のエッジを無視し、知らないマーケットでベットする危険な行為だと見られています。ところが、CBトレーディングは結構難しいマーケットで、CB単体をトレードするだけでなく、株のショートポジションや金利スワップ、クレジットマーケット(CDSクレジットデフォルトスワップ)などマーケットを横断して運用が必要となるめずらしい商品で、アマランス首脳が他市場に運用を拡大するのに抵抗がなかったのでは、と思います。

こうしたマーケット環境の中、アマランスの運用成績も低迷したのですが、反対にこの時期大きく稼いだのが天然ガストレーディングだったそうです。このため、それまであまり目立たなかった天然ガストレーディングがアマランス社内で注目されるようになったそうです。アマランスの不振を救った天然ガストレーダーのハンター氏はいちやく社内で注目されるトレーダーになったようですが、彼が大手ヘッジファンドで、超高給取りのヘッジファンドマネージャーとして知られる、スティーブン・A・コーヘン氏率いるSACアドバイザーズに高給で引き抜かれそうになり、アマランスの首脳陣は引止めのため、彼が本社があるNYを一人離れ、カナダからトレーディングをする事を許可したそうです。
そのうえ、アマランスの他の運用戦略が低迷する中、ハリケーンの影響でエナジー関連が暴騰する、いわゆるハリケーン・ロングポジションをとっていたハンター氏は、天然ガストレーディングで大きなリターンを産み出したとのこと。確かにここ1~2年、コモディティマーケットは大きく右肩上がりに拡大しました。日本の新聞でもアメリカの原油WTIの価格が一面を飾り、エナジーマーケットが活況であり、以前からこのマーケットをカバーしていたアマランスが大きく稼ぐまたとない機会を得たのは理解できます。

こうして大きな権限を持たされ、さらに本社から離れ自宅のあるカナダ・カルガリーで一人トレーディングを行うことを許されたハンター氏を十分管理するすべは、もはやアマランス首脳陣にはなかったでしょう。

この事件も結局、トレーダー管理不行き届き(笑)に帰結するとおもうのですが、注目すべきは今回これだけの大型破綻を起こしながら、マーケット全体に対してマッタクといって影響を及ぼさなかった点です。
つまり、LTCM破綻時に比べ、そのプライムブローカー技術や信用供与についての技術革新、マーケットのシステマティックリスクを避けるノウハウの蓄積は相当な物だと言うことだとおもうのです。

、、、このへん、「あやしいファンドが破綻してマーケットが大混乱だ!すぐ規制すべきだ!」としか語れない日本の金融当局やメディアの理解度はマッタク進歩しないなあ、と。
悲しいかな、プライムブローカー業務は欧米投資銀行の独壇場で東京の日系金融機関への影響はほぼゼロでしょうし。。。
[PR]
by ttori | 2006-12-16 18:54 | Market(マーケット事件簿)
<< おっかいもの、へい! 沈黙の艦隊 >>



小さな窓から見上げると曇り空でも、外に出ると意外と晴れてるもんだ。
by ttori

カテゴリ

全体
プロフィール
本 / CD / TV
プライベート
Market(マーケット事件簿)
News
CM一考

以前の記事

お気に入りブログ

メモ帳

検索

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧