開発主義の暴走と保身

f0005681_1114790.jpg開発主義の暴走と保身
~金融システムと平成経済~ 池尾 和人(著)

用事で大阪に行ったとき、行き帰りの新幹線の中で7割がた読んだんですが、しばらく積読になってまして、、、。
(追記:下記、少し加筆しました)
かなり興味深く、頭の整理にはかなりお勧めの本です。
金融システムの問題についてかなりわかりやすく書いてあると思います。

戦後、経済復興を第一とし、すべての制度設計を国家復興、開発主導で進め、大成功をおさめたこの国は、復興がなった後、あまりにも成功したそのシステムを改革できず、高度成長の幻想を追い求め、マネーの暴走を許し(バブル)そして巨大な失敗をうみだした(バブル崩壊と失われた10年)。その過程を金融面から丹念に検証しています。




そのなかで個人的に興味深かった点をいくつか。

・なぜ高度成長は終わったか?
一般にオイルショックのため、といわれているが、実際にその後の石油価格低下局面でもGDP成長は戻らなかった。ただ国内では、高度成長の継続が前提となり、マネーサプライを増大させ、金利を人為的に低位に固定して、再び高度成長へ戻ることが期待された。このマネーサプライの増大がやがてバブルを産み出すこととなる。
オイルショック原因説に対して東大の吉川教授が唱えているのが、「過剰人口枯渇説」。つまり、農村部の余剰人員をメーカーなど都市部の企業が吸収して成長を行っていたが、この過剰人口が枯渇してしまい、成長が鈍化した、という説。(追記:証言 戦後日本経済 ~政策形成の現場から~ 宮崎 勇 著 にも同じ記述がございました。、、実は結構有力な説??)
個人的には納得がいく説明で、外部要因(オイルショック)はやがて克服され、上昇が継続しなければ、大きくGDPを押し下げ続けはしない。一方生産人口が増えなければ、国内生産の成長はほとんどが生産性上昇率と労働人口成長率の合計で頭うちになってしまい、個人的には今後の日本経済も上記の合計で頭打ちになってしまうのでは、と思う。
なにより、海外と違い今後日本国内では、労働人口が低下していくなかで生産性上昇にも限度があり、リストラを徹底し疲弊した生産現場での生産性向上には限度があると考えています。
日銀が唱えていたダム論(企業収益が上がればやがて従業員へ波及し、景気がよくなる)とは異なり、統計からかつて資金余剰であった個人が資金不足主体に転落し法人企業が資金超過に転じた、という点はもっと重視していい点だと思います。
これは金融ビジネスを根底から変える大きな変革だと考えています。
GDP成長率があがらない、ということは国債買い主体が国内金融機関がほとんどで海外に赤字ファイナンスをお願いしていない現状、国内金利の上昇も限られていると考えられます。

・BIS規制導入の背景

BIS(Bank for International Settlements:国際決済銀行)規制という話が最近も話題になていますが、本来の目的は、銀行活動の高度化、複雑化に対して文字どおり、国際(国をまたぐ)決済リスクを監視する目的で、各金融機関にバランスシート上の総量リスクを把握し、最低限の資本割り当てを行い、決済リスクに対するバッファーを持たせることを規定したものです。ところが、日本の金融機関は護送船団方式のなか、ひたすらバランスシートを拡大していけば稼げていたため、その意味を取り違えた。
(実際、大手国内銀行の企画担当で、このときのBIS規制導入に直接関わった方のお話を聞く機会があったのですが、その方が言っていたのは「その当時の銀行担当者の認識として、”大蔵がまためんどくさいこと言いやがって、株の含み益くらいみとめてくれよ。大蔵の責任でどうにかしてくれよ”との認識しかなかった。今考えると(その方は海外経験も豊富で、デリバティブや証券化技術については国内屈指の方でしたが)規制時代の発想がマッタク抜けていなかった」とのこと)
ところが、その後の各銀行の国際化、デリバティブの発展に伴い、オフバランスシートの巨大化をへて、巨大なリスクが世界各国に分散されるようになりました。なにより、デリバティブの発展で、銀行は欲しいリスクを組み替え、オフバランスでリスクを取れるようになりました。つまりたとえ規制をかけても銀行は「欲しいリスクを欲しい形で」結局手に入れることが可能になりました。
個人的な捕らえ方ですが、今回のBISバーゼルⅡはBISの”白旗”だと思っています。つまり、最先端デリバティブのリスク把握が部外者には把握できなくなってきており、”自分でリスク管理をしてくれ!”ということで、リスク管理が文字通り銀行の生命線となっていると感じます。

今回は2点だけですが、かなりいろいろ論点がある本です。
読みやすく、面白い本でお勧めです。
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by ttori | 2006-11-12 10:32 | 本 / CD / TV
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小さな窓から見上げると曇り空でも、外に出ると意外と晴れてるもんだ。
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