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ヘッジファンド上場の意味

harry_gさんがお書きになっていた、ヘッジファンドの上場について。
まとまっていないですが、個人的な考え。




・論点整理
まず、ファンドそのものの上場と、ヘッジファンド全体の上場の違い。
ごっちゃになりやすいですが、ヘッジファンドの構造を整理すると、ヘッジファンドは運用会社(=投資顧問会社)と実際に資産を保有しているファンドに分かれた構造をとっています。これは野村アセットマネジメントなど国内運用会社と同様です。
いままでPE(プライベートエクイティ)ファンドやヘッジファンドの上場というと、後者のファンド上場を指しました。目的として考えられたのが、流動性の少ない資産を抱えるファンドの出資者に対して、資金流動性を供与する、という目的が考えられます。これは、ミューチュアルファンドなどと違い、HFの解約が年に数回しかないなど、換金性に難があった事が原因と考えられます。ただ、多くのHFの出資者が大金持ちだったと思われますので、このあたり、あまり必要性がなかったとおもいますが。。あと、多くの機関投資家がHF投資を行うようになり、その投資の間口を広げる意味合いもあったと考えられます。(多くの機関投資家が上場したものしか投資できない等の縛りがあるため)

・そもそもキャピタルが必要なのか?
で、今回話題になっているのが、ファンドの運用会社の上場です。
これは上記のファンドそのものの上場とは意味あいがまったく違うと考えられます
まず上場の意味は二つ考えられます。一つは上場に伴い、信用が得られる点。もう一つは、一般から資本を集め、永久資本を獲得できることです。
では、ヘッジファンドはセカンダリーマーケットから機動的に資本調達する必要があるのか?という疑問がわきます。
そもそも、運用会社は巨大なキャピタルが必要な業態ではありません。営業のためにそれなりの設備投資は必要ながら(このあたり、金融機関は設備投資は必要ない、と誤解している人が多いですが、、、)極端な話、ヘッジファンドは人一人、パソコン一台で開業できたりします。
つまり、私募の他者資金を運用している限り、HF運用会社そのものが、わざわざIPOをして一般からキャピタルを調達する必要に迫られることはほとんどないのです。
ではなぜHF運用会社が上場するのか?
逆に考えると、資本が必要な業務を行うため、と考えることができます。ここで参考になるのはGoldmanやMorgan Stanlyなどの大手投資銀行です。現状彼らの収益のほとんどがプロプライアトリー(自己資本)投資から得ています。同様に大手のHFも自己資本運用を行うために(=プロップ投資をするために)資本が必要と考えるのであれば、自己資本を充実させる必要があります(自己資本投資を行うためには、それに比例して厚い自己資本が必要)。つまり、一部HFは他者資金を運用するのではなく、自己資本を運用する、事業会社(投資銀行)に業態変化していっていると考えられます。(一般に上場でガバナンスが楽、という話がありますが、現状マネジメントがほとんどの株を保有していると考えられ、あまり現実的な話ではないと思いますが。。。)
(あと、最近はバイアウトファンドなど、資本を豊富に供給できる先が増えているのに、わざわざIPOをする、という点は興味深いですが。このあたり、もっと考えたいです)

もう一点、ファンドレイジングの苦労からの開放ですが、そもそも、他者資金を集めて運用するのであれば、(上場により、信用が高まり資金が集めやすくなるかもしれませんが)ファンドレイジングの苦労はそれなりにあると思います。
つまり、IPOはこれまでのHFという運用会社から、上場投資銀行への業態変化の一つのきっかけかもしれません。

・どっちがリターンが大きい?
もちろん、HFの上場も大変だと思います。HFの収入のほとんどがマネジメントフィーと、年に一回の運用成功報酬です。つまり、収入が年に一回しかない、ということです。情報開示も含め四半期決算をおこなう上場会社としては最悪の部類ですな(笑)。上記のようにプロップ会社化したファンドであれば、それなりの収入があると思いますが、ダイレクトに資本をリスクにさらしてトレーディングを行うのと、ファンド規模に応じた固定のマネジメントフィープラス、成功報酬のアップフロント収入オプションで収入を得るのと、どちらが資本のリスク・リターンの効率がいいだろうかと考えます。このあたりの比率はフォートレスの今後に期待したいと思います。

・創業者の利益確保?
もう一つ考えられるのが上場による、創業者利益の確保です。
特にファンドにキーパーソン条項(HFマネージャーが辞めると、ファンド解散するとか、資金を引き上げるとかの条項)が付いている場合、なかなかファンドから引退したくてもできない事態が考えられます。また、HF業界が大きく発展した80年代から20年以上たち、一線のHFマネージャーの中には引退を考えているものもいると思われます。
ただ、今回のフォートレスの件には当てはまらないと思いますが、、、。
(追記:よく考えると、すでに結構な金持ちになってる成功したHFマネージャーがわざわざIPOして創業者利益を目指すのかな?とも思いますが)

まとめると、
・一部大手ヘッジファンドが投資銀行化している
・一方で他者の資金運用に特化しているHFは今後もプライベートの形態を続けると考えられる

つまり、HF業界も二手に分かれていくのではないか?と思いますが、いかがでしょう?
by ttori | 2006-11-07 23:15 | Market(マーケット事件簿)
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小さな窓から見上げると曇り空でも、外に出ると意外と晴れてるもんだ。
by ttori