三菱UFJモルガンが993億円のトレーディング損失、300億円の増資へ
三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱UFJモルガン・スタンレー証券(秋草史幸社長)は21日、親会社の三菱UFJ証券ホールディングスに対する300億円の第三者割当増資を実施し、資本増強すると発表した。フィクストインカムのポジショントレーディングの一部業務で1─3月期に993億円のトレーディング損失を計上し、2011年3月期決算で大幅な最終赤字になるのが主因。 増資後の三菱UFJモルガン・スタンレー証券の自己資本規制比率は250%程度になる見通し。払込期日は4月22日。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の11年3月期当期損益は1450億円の赤字。このうち、11年1─3月期にトレーディング損失を計993億円計上したことが大きく響いた。 会見した三菱UFJモルガン・スタンレー証券幹部によると、損失の原因は、1)トレーディングで相場を見誤った、2)問題となったポジションを圧縮するため損切りした、3)その他のポジションでも評価の甘い部分の評価を見直した──の3点だった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、今回損失を計上した業務を縮小する。 三菱UFJ証券HDは同時に、2011年3月期当期損益が500億円の赤字になる見通しだと発表した。 (ロイター2011年 04月 21日 17:50 JST) というわけで久々に出てきましたマーケット事件簿。 今回は三菱UFJモルガンスタンレー証券(ながっっ)*のスワップション(金利のオプション商品)における損失1000億**。わたしゃ株屋で債券畑ではないんですが、調べてみたことを少し。 *過去最も長い社名だと思ったのは太陽神戸三井銀行とか、日興ソロモンスミスバーニーとか。 **兆じゃないからマーケット事件簿にしては小さいなー、っていうのは感覚が多分おかしいです、ええ。 、、、まー、実は会社の外人に「三菱がスワップで大損してるらしい、、」という噂を聞いたのは2月?3月頭くらいだったかな?と思います。そんときは「ふーん」位にしか思ってなかったんですが。 さてさて、デリバティブというと直ぐに数字がインフレしてしまいます***。今回は「三菱UFJは130兆円!のポジションをもってた、、」という話にになってますが。で、実際にどうだったの?ということで三菱UFJのディスクロージャー資料から数字を拾ってみましょう。 ***これはデリバティブが相対で取引されるため、見た目ポジションゼロでも、裏で大量な残が積みあがってるため(例えばあるオプションの契約を100億JPモルガンとして、GSで反対売買したらエクスポージャゼロですが、グロス残は200億)。下記に出てきますが、例えば三菱UFJの金利スワップ残はあわせて約570兆!もあります。 2011年(平成23年)3月期 中間期のディスクロージャー資料13Pに連結のデリバティブの保有残高が出ています。 (1) 金利関連取引 (単位:百万円) 契約額等 時価 評価損益 うち1年超 金融商品取引所 金利先物 売建 4,872,638 2,816,437 △14,767 △14,767 買建 3,262,810 2,060,858 17,734 17,734 金利オプション 売建 3,368,294 43,515 △999 557 買建 3,568,916 43,640 1,067 △906 店頭 金利先渡契約 売建 21,634,720 119,763 3,150 3,150 買建 24,139,602 142,092 △2,759 △2,759 金利スワップ 受取固定・支払変動 264,835,154 198,680,174 7,999,716 7,999,716 受取変動・支払固定 270,205,464 195,083,420 △7,575,676 △7,575,676 受取変動・支払変動 32,881,487 24,440,911 △25,074 △25,074 受取固定・支払固定 498,096 461,855 △39,813 △39,813 金利スワップション 売建 72,044,440 49,437,342 △895,743 △275,953 買建 49,721,274 31,748,383 835,082 257,770 その他 売建 5,297,056 4,500,993 △28,591 △11,577 買建 3,004,154 2,014,715 27,648 16,698 合計 ー ー 300,972 349,098 確かに他の金利先渡契約や金利スワップなどはほとんどエクスポージャーがマッチアウトするような形になってますが、金利スワップションだけ売建72兆/買建50兆となっており、差分22兆円の売エクスポージャがあります(金利スワップは売265兆/買270兆の5兆、時価差分は4000億)。また、1年超のポジも売差分18兆も出ています(三菱東京UFJ銀は売建6兆/買建5兆と桁一つ違うので、ほとんどが証券部門のポジションだと思いますが)。 もちろん単純に裸でもってるとも思えません。現物やスワップでヘッジしているとも思えますが、それぞれの商品での利益でみるとこの時点ですでに150億円の損失が出ていることがわかります(もちろんヘッジポジションで利益が出て相殺されているとも思いますが)。さらに時価評価を見ると、6000億の売超となってます。 ちなみに10年3月期のポジションは売建60兆/買建40兆とやっぱり20兆円の差分エクスポージャがでてます。この時の時価差分はほとんどゼロ、09年3月期をみると売建43兆/買建32兆の差分10兆円時価差分600億売超、08年3月期は売建28兆、買建23兆の差分5兆円時価差分は1800億の買超。確かに直近ポジションが大きくなってます。 しかしながら、普通考えるとあまりにも大きいポジション。もちろん実態はわかりませんが、どうも6000億のショートしたところに急に踏まれて大ヤラレした、という風に見えます。6000億で1000億のロス、というと17%くらい****。一部ではディープアウトのオプション(例えば日経オプションでいうと5000円プットとか、ありそうもない現値から乖離したストライクのオプション)のショートを踏まれた、との話もありましたが。確かに例えば10年3月期だと20兆も売超なのに時価差分額がゼロ、ということは安いオプション(=アウトのオプション)のポジションが多い、ともとれます。 ****bloombergでスワップのチャートをみると、10年とか昨年12月中旬に妙な上ひげをつけてたりして、「あーこのあたりでロスカットかなんかしたのかなあ」とも思いましたが。アウトのオプションなんて一瞬で価格が倍になったりしますので、実際のとこどうなのかはわかりません。 ともあれ、大怪我なのは確か。かつて私もアウトのオプションのショートは危険と教わりましたが。プロでもオプションの売りは難しい、ということでしょうか、、。 【追記】しかしよく見ると一貫してノーショナルは売超、時価はほぼフラット、というポジションなので、基本アウトショート、ニアorアットがロングの単純なボラスマイルに沿った戦略では、とも。そういうシンプル戦略(リクイディティはなかったかもしれませんが)で大損、ってどう考えてもリスク管理とか、モデルの問題だとおもう私はフロントの人間だからですか、そうですか。 【追記2】下記コメントいただきましたが、株と違って金利オプションは長さ(例えば10年のスワップションと1年のスワップションといった)でリスクが全然ちがいますから、単純に上の分析で”どういうリスクエクスポージャだったか”はわかりません。ただ、全体でガンマショートになっていたところに”昨年度後半のJGBマーライオン相場 by はちご先生”でやられた、んだろーな、とも思います。個人的にはオプショントレーダの人は”長短ミスマッチ”までポジションをとらんのでは?とは思いますけど、、(デュレーションはマッチさせてボラのみにリスクエクスポージャを限定してた、という意味、イールドカーブとボラの期間構造でアーブやってた、って話なら知りません)。
by ttori
| 2011-04-22 20:30
| Market(マーケット事件簿)
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